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失われた週末 [音楽]

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「失われた週末」という映画がある。
今週、NHK BSで放映されていたので見た人もいるかと思うけれども、「サンセット大通り」、「麗しのサブリナ」、「七年目の浮気」、「昼下りの情事」、「翼よ! あれが巴里の灯だ」、「お熱いのがお好き」、「アパートの鍵貸します」…と監督作のタイトル書いただけでも凄いものがあるビリー・ワイルダー監督の映画で、アルコール中毒の恐怖を描いたものだ。

しかし、上記でリンクを貼ったwikipediaの「失われた週末」の項の下部には、「関連項目」としてこんな記載がある。

ジョン・レノン:1973年から約2年間にわたってオノ・ヨーコと一時別居状態となり、その間アルコール中毒に苦しんだ。この期間は、本映画になぞらえて「失われた週末」と呼ばれている。


この期間は、ジョンのアルバム「マインド・ゲームス」発売前後にヨーコから別居しようと言われ、ニュー・ヨークからロサンゼルスに移り住んだジョンが、その寂しさから酒浸りになっていた駄目な日々だと言われていた。

特に、ハリー・ニルソンのアルバム「プシー・キャッツ」をプロデュースするためにハリーやリンゴ・スター、キース・ムーンと共同生活する傍ら、毎夜飲み歩き、"The Troubadour"というクラブで、生理用品を額に載せて店のウェイトレスと諍いになったかと思えば、その2週間後には、同じクラブで酔っ払って出演者を野次ってたために、店を叩き出される有様であった。

(店を叩き出されるジョン)
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※左端がハリー・ニルソン

また、ビートルズ時代の曲「カム・トゥゲザー」が、チャック・ベリーの曲「ユー・キャント・キャッチ・ミー」(YouTube)の盗作であると、チャックの楽曲の出版権者モーリス・レヴィから訴えられ、和解の条件として、彼が出版権を持つ曲をジョンが3曲カバーすることとされたため、ロックン・ロールのカバー曲集「ルーツ」をフィル・スペクターのプロデュースの下に製作していたが、二人ともアル中の状態でレコーディングしていたため、フィルがスタジオの中で拳銃をぶっ放し、挙句の果てはマスター・テープを持ち逃げして姿をくらませてしまい、当然レコーディングは中止となった。
(後にテープは戻ってきたものの、その殆どは使えず、再レコーディング(今度はセルフ・プロデュース)するものの、今度はモーリスが完成間近の音源を勝手に発売してしまったりという経緯の後に、「ルーツ」のレコーディング開始から1年4ヶ月後にアルバム「ロックン・ロール」は発売された。)

こうしたトラブルが表に出たこともあり、この「失われた週末」期の18ヶ月は、「愛と平和」の人、ジョン・レノンらしからぬ彼の黒歴史と思われてきた。

そんな時期に彼の公私共にパートナーであった、メイ・パンの本が出たので、年末に買ってみた。

ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド Instamatic Karma
メイ パン
河出書房新社
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おすすめ度の平均: 4.5
5 失われた週末?
4 買いです。
5 好著


「失われた週末」期のジョンの写真と回想エピソードといっても、暴露本の類ではない。

この本に出てくるのは、とてもリラックスして優しげな表情をしたジョンや、当時公には犬猿の中(70年代の頭にはお互いに貶していると思われる曲を出し合いしていた。)であると思われていたジョンとポール・マッカートニーの2ショットだったり(こんな写真、初めて見た。)、ジョンとポールそしてスティービー・ワンダーとのセッションの様子(写真はない)や、4年振りに先妻シンシアとの間に出来た子ジュリアンとの対面や海水浴に行って父親振りを発揮している様子、法的にビートルズを解散する文書にサインしている写真など、ヨーコがいない時期に身近にいた彼女だから撮り得た貴重な写真が満載である。

ジョンは、「休暇」に飽きてヨーコの元に戻った後に、この時期のことを「失われた週末」と自分で言っているが、確かに飲み過ぎていた時期もあったかもしれないけれども、そう悪くもない日々だったのかなあとも思う。
(この時の周囲には、ハリー・ニルソンやキース・ムーンなど、結局飲み過ぎたまま死んでしまった人達もいるのだけども。)

悪くないかもと思う理由には、この時期、「ルーツ」のレコーディング中断後に製作された彼のソロアルバムに"Walls And Bridges"(邦題「心の壁、愛の橋」)があって、このアルバムが所謂「愛と平和」って感じじゃなく、音がポップな割に内省的であるため、何故か「枯れた」印象があるんで個人的には好きなためってこともある。
ジョンのソロ作中で、唯一歌詞に"YOKO"という単語が出てこない(製作時期が時期だけに、当然か?)アルバムだったりもするのだけども…

心の壁、愛の橋(紙ジャケット仕様)
ジョン・レノン
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おすすめ度の平均: 4.5
5 ジョン・レノンの「心の壁、愛の橋 」
5 個人的には星を10個あげてもいいくらいの擦り切れ盤
4 スランプの時期の作品だから・・・
3 弱虫ジョン
5 凄まじくも美しい、ジョンの心象スケッチ


プロデュースしたハリー・ニルソンのアルバム「プシー・キャッツ」も悪い出来じゃないと思うし。

【Harry Nilsson "Many Rivers To Cross"】

※「プシー・キャッツ」の1曲目。このバージョンは好きだ。

プシー・キャッツ(紙ジャケット仕様)
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5 ジョン・レノン、プロデュースの名盤 (迷盤???)
4 ジョン・レノン、プロデュースの名盤 (迷盤???)
5


本当にアル中になってて荒んでいた時期だったら、こうしたいい仕事は出来ないと思うのだ。

ジョンが酔っ払って少々オイタをすると騒ぎになるが、この私が酔い潰れた挙句に地下道でぶっ倒れて朝を迎えても、「ああまたか。」で終わってしまう。
これも人徳の違いである…(ノ_-。)

個人的には、ジョンのソロ作中、やはり一番出来がよいのは「ジョンの魂」で、最悪なのは「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」だと思っています。
ただ、「ジョンの魂」はやっぱ始終聴くにはチト辛かったりも…

そういう意味で"Walls And Bridges"は、このアルバムの前作に出され、個人的には退屈に感じられる「マインド・ゲームス」や、「サムタイム…」、そしてあえて言ってしまえば遺作である「ダブル・ファンタジー」よりもよっぽど好きで、ジョンのアルバムでは現在最も聴く頻度が多かったりする。
「ダブル・ファンタジー」は確かに個々の曲はいいのがあったりするのだけど、そういう聴き方だったらベスト盤でも良いのでは?という感じで。
(ちなみに筆者は、別に小野洋子が嫌いとかいう訳じゃなく、普通にヨーコのソロとか聴いたり(1~4枚目辺り)はします。ただ、ジョンとヨーコがアルバムで混じると、ヨーコさんのほうが勝ってしまうのだ。)

そんな訳で、この「失われた週末」の時期ってのは個人的に興味があったので、色々とこの本は楽しめた。
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